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MARCH
レポートTHURSDAY 2017 / 3 / 16
本当にうまい日本酒 vol.2
Text by Miho Azuma
前編はこちら→ 本当にうまい日本酒 vol.1
おつまみはこちら→ 本当にうまい日本酒 vol. 1.5
余談ですが、カミナリvol.45の一部ヴィジュアルは食器セット(スタッフ私物)、ハンドモデル(はたらき者の綺麗な手)でできています。
さて!前回は酒蔵内部へ踏み込んだところまででした。
スタート地点は最上階(多分)です。松江市内をみわたせる、隠れ絶景ポイント。
とびらをあけた瞬間の清々しさは是非とも現地でご確認いただきたいですね。
日本酒の原料になる酒造好適米、これを洗うのは洗米機です。昔ながらの手作業もいいけど、いまでは機械のほうが綺麗に洗えてしかも早い、ということで李白さんでは機械化されています。
ここで最初の「表」と「メーター」が登場。
お米を洗った時の日付、気温、湿度、etc……
沢山のことがビッチリ記録されています。
「お米を洗う前の重さ」「洗った後の重さ」を記録して、浸漬前の水分含有量を算出していたことに驚きました。
お米に吸わせる水の量は、日本酒の質を分けるポイントの一つ。
李白さんではお米を研ぐ段階から徹底的にこの水分量を調整しているんですね。
それからお米を水に浸す”浸漬(しんせき)”、”蒸米(じょうまい)”を経て、麹(こうじ)に変身させていくわけですが、
熱々の炊き立てご飯を豪快に広げて種麹を混ぜていく作業、今回は見られず・・・
一般に酒蔵の朝は早く、ほとんどの作業を午前中におえられるそう。見学に行かれる際は要注意です!(今回の取材は夕方に行っちゃいました)
モザイクかけてますが、壁の表からすごい熱量は感じ取ることができました。
製造日程・担当者さん・気象条件・お米の温度etc…etc…
ワンシーズン分のあれこれがびっちり書き込まれてます。取材陣が「うわ〜!!」と叫ぶほどの細かさ。
一合の日本酒を作るあいだに文庫本一冊分の文字量になるのでは…
こんな感じの表がいたるとこに設置されています。
種麹を散布したお米を適温に保ちつつ呼吸できるよう空気を入れ替えながら、数日かけて仕込んでいきます。
昼夜問わず麹をかき混ぜる作業が必要な為、昔は杜氏さんが泊まり込んでお世話していたそう。夜明け前に交代の人が来て、火にあたりながら早めの昼食をとり、ちょっとお昼寝して……酒蔵の朝が早いのはこの頃のなごりなんだとか。
現代でいう二交代制シフトといったところでしょうか。
今は機械化され、基本的に寝ずの番はしなくてよくなったそう。
とはいえ麹をおさめた棚の位置を入れ替えたり、状態をチェックしたりと人の手は欠かせません。
糖化が進んだ麹は、味も香りもとっても甘い!
こちらは”酒母(しゅぼ)”
読んで字のごとく、お酒を生みだしてくれるものです。
麹によって糖化されたお米のでんぷん質を分解して生まれたグルコースや酵素の作用で云々……ちょっと難しい話になりますが、つまりアルコールが発生する工程です。甘みや酸味、香りのバランスも形成されてきます。
難しい話は図解付きの方がわかりやすいですね。【 日本酒 作り方 】で検索!(身も蓋もない)
酒母のお部屋に踏み入れた瞬間、甘い香りに包まれました。仕込んだお米が流体になっているのもこの工程から。
飲兵衛としてはワクワクが高まる瞬間です。
酒母を”もろみ”にしてさらに熟成していきます。
大きなタンクに移し、米・麹・水を複数回に分けて混ぜ合わせます。
ずらっと並んだタンク。ヴィジュアル的には工場見学そのものです。
中身はひとつひとつ違って、香りを確かめながらぐるりと見せていただきました。
タンクに書かれた日付、社長さんの誕生日と同じものもあるとの事。就任前から不思議な運命を感じていたそうです。
最新の設備のなかに時々歴史を感じるアイテムが。
完成したもろみを袋にいれて搾り、酒と酒粕に分けます。
この絞り方にもいろいろあって、李白さんでは写真のように横から圧をかける装置と、上からゆっくりプレスする昔ながらの装置があります。
こうして出来たのが”原酒”。しぼりたてでしか味わえない荒々しい風味を持っています。微炭酸のように感じる方もあるみたいですね。
季節・数量限定の貴重なお酒です。日本酒に強い酒屋さんか、酒蔵で直にお買い求めできます。
そのままだと酵母菌や酵素などの作用で味が変わるので、火入れを行い安定させます。それから低温で貯蔵することで、じっくりと熟成が進み、甘みや旨みが増してきます。
そして仕上げ、瓶詰めされ、各銘柄のラベルをまとって世界中に出荷されていきます。
日本酒はほんとうに長い工程を経て、ようやくお猪口にたどりつくんですね。
今は全体的に最新の設備を導入され、より精密に管理しながら、寝ずの番もしなくて済みむようになりました。
ベテランでなくても仕込みができるような工夫と無理なく続けられる労働環境、初代から受け継がれてきた技術と当代の知識力……きっと外から見えない部分の努力も沢山あると思いました。
その効果もあり、李白さんの社員平均年齢は30代、酒蔵では大変珍しく若い杜氏さん方が活躍されています。
ちなみに高級なお酒の製造は今でもほぼ人力だそうで、
手間暇かけて作られていると知り、その価値とありがたみを再確認しました。
これまで以上に美味しく感じられそうです。
田んぼで生まれたお米が蔵に届き、職人さんの力でおいしい日本酒になり、家庭に届き、農家さんの晩酌や直会で大活躍して農業にまた精を出し、おいしいお米がうまれ……田舎出身の私にはこういうパーフェクトな循環図がみえました。ウィンウィンですね。
もちろんそんなの関係なくても
日本酒を愛する方に届けば嬉しいと、杯を酌み交わしながら語り合う時間を大切にしてくれたらもっと嬉しいなと、今回カミナリvol.45では地酒特集やっちゃいました(私達が飲兵衛だからってだけじゃないんですよ!笑)
昨年末、田中社長に取材ご協力いただいた際に伺った事が忘れられず、なんとかして若い人に日本酒・食・それにまつわる歴史や文化へ振り向いてほしいな、っていうのが主なきっかけでした。実際に特集してみて、私達自身がまずはこんなに面白い世界に近づけた事、ちょっとだけ詳しくなれた気がして嬉しく思っています。
今回ご協力いただいた酒蔵の皆様に心より感謝しています。
また、ウェブマガジン・フリーマガジン「カミナリ」を読んでくださる読者の皆様、ありがとうございます。日本酒、ほんとおもしろいですよ!
今回ご協力いただいた蔵元様へは下記リンクから!(順不同、敬称略)